「そばへ」特集

東宝×オレンジ×丸井グループ
オリジナルショートアニメーション

あの雨の日に、

世界が違って見えてきた。

”若手アニメ監督の登竜門”を目指す
一大プロジェクト第1弾。”

・ THEMA

“インクルージョン”

丸井グループでは、すべての人が“しあわせ”を感じられるインクルーシブで豊かな社会の実現をめざしています。
本作では“インクルージョン”を理解するうえで大切な、価値観の違いを理解することで世界が拡がるイメージや心の動きを、美しい映像と音楽で表現しています。

・ STAFF ・

監督
:石井 俊匡 (『未来のミライ』助監督)

:福原 遥 (『キラキラ☆プリキュアアラモード』声優)

キャラクターデザイン
:秦 綾子 (『未来のミライ』 作画監督)

コンセプトアート
:長砂 賀洋(『Moom』 アートディレクター)

音楽
:牛尾 憲輔 (『聲の形』『リズと青い鳥』 音楽)

プロデューサー
:武井 克弘 (『宝石の国』 プロデュース)

 
/和氣 澄賢 (『宝石の国』 制作プロデューサー)

制作
オレンジ

INTERVIEW ・

監督
石井俊匡に聞きました。

丸井グループ「そばへ」dアニメストア配信記念特別インタビュー

―「そばへ」のオファーを受けたときはどういう印象でしたか?

オファーは、プロデューサーの和氣さん、武井さんから、丸井グループの企業CMのコンペで出してみても良いか?という話があり、コンペが通って、やらせてもらうことになりました。丸井さんのCMという話だったので、服とか、おしゃれとか、そういう直接的な映像をつくるのかと思っていました。だけど、「インクルージョン」という企業理念をテーマにつくって欲しい、それ以外は自由で、というオファーでしたので、むしろ、どうやったらいいのだろうね、と。
「インクルージョン」って、やっぱり考え方も難しいというか。もちろん、概念として言いたいことはわかります。たぶん、いろんな人たちが手を取り合って笑っている、のようにわかりやすい映像は作れるのだろうと思うのですけど。プロデューサーが、こういう作品を創りますという案を出してくれたのですけど、それだと直接的な表現ではなく、(制作会社)オレンジの3DCGの特性を活かしてダンス踊るなど、映像表現的なところでインクルージョンというものを表現していく形で、それを丸井さんの方もすごく良いということでしたので、その方向に決めました。

―石井監督にとっての「インクルージョン」とは、どういうイメージですか?

丸井さんの企業理念は、「誰も仲間外れにしない」「みんなが平等」というとらえ方の考え方です。自分にとっても、もちろんそういう社会や、考え方は目指していきたい、と思いつつ。自分としては、そこまでが、一歩、二歩、、、もしかしたら三歩くらい、遠いところにあるかもしれないな、という印象も持っています。世界平和って、例えば、どうなったら平和なのかな、とか。そういう大きい視点もですが、まず一歩、そこに近づけるために何ができるか、みたいなところを考えています。そのためにまず、相互理解があるのではないか、と。今、お話しさせていただいている中でも、この人どういう人なんだろうな、とか、何を言ったら喜んでくれるのかな、とか、あると思うんですけど。そういう、まずは相手のことを理解して、そして、自分はどう思うかを、感じなければいけないな、とは、常に考えています。それを受けて、この人とは楽しくやれるな、とか、もしかしたらちょっと苦手かもしれないとか。苦手と思っても良いとは普通に思っていて、苦手だったらそれ以上近づかなければ良いだけだし、無理に全員のことを好きになる必要もないかな、という考えです。それを含めて相互理解であって、好きな人とは仲良くすれば良いし、苦手だと思っても、ワザと相手を傷つけなくても良いわけじゃないですか。自分と同じにしようと思わなくても良いというか。自分と相手は別人なので。そういう意味で、相手との距離感、というものを適切に保つことが、ひとまずインクルージョンの入口なのではないかと考えて、今回、制作しました。

―インクルージョン=相互理解という考え方を持つようになったきっかけがあるのですか?

昔から、そういうことを思っていたかはわからないのですが、演出になってから携わった作品が面白かったんです。「亜人ちゃんは語りたい」というアニメは、こういうアニメをやるのでやりませんか?とのお話しを受けて初めて原作を読んだときに、すごく面白いなと思いました。あの作品が、お互いを知ることから始めようというメッセージで、これがやっぱり大事なんだということは、そこから意識するようになったかもしれません。
苦手な人は苦手なままでもいいんじゃない?というのは、仕事をしていく中で思ったことですね。ああ、この人苦手だな、ともし思ったとしても、じゃあ、あなたとはもう一緒にできません、なんて言えないですよね、普通に。それならこの人と気持ちよく仕事するにはどうしたら良いかな、と考えるし、そうしないと自分の休みも作れない(笑)

―はい、すごく大事なことだと思いますし、どの仕事でも一緒だと思います。

そういう意味で、相手との距離感を考えたりだとか、「これは少し言いづらい」ということを話すときは誰か共通の敵をつくってみたりとか、するわけですよね(笑)この人とはういう距離が良いのかなこの話をすると大丈夫かな、など、色々、考えつつやっていたので、仕事からのフィードバックもあったのかな、と感じます。

―今まで関わられた作品だったり、環境だったりがきっかけということですね。

あと、大学の時のサークル活動で、1 年目に同学年で、すごく苦手な人が居たんですけど、2年とかたつうちに、もうすごく仲良くなって、大晦日にアルバイトが終わったら、その友人の家に行って二人で年越しをしたり。今はもう卒業してから、そんなに頻繁に逢うことはないんですけど、こないだも久しぶりに逢って。最初は苦手だと思って距離感を取っていても、意外と時間が解決するなり、相手が近づいてくれる
なり、することもあると思うので。まずは、無理やり好きになる必要もないのかな、という考えは、そういうところからもきているかもしれないです。

―今回の作品では、雨が好きな人と雨が嫌いな人の相互理解が込められているんですよね。

プロデューサーの和氣さんから、雨をCGでやったらすごいキレイになると思います、と。和氣さんも雨が好きで、やってみたい題材だったということがあったので、それでやってみようとなったときに、それなら、こういうこともできないですか、と、提案させていただいて、やらせてもらいました。ただ、和氣さんは雨が好きで、自分はあんまり雨が好きじゃなくて(笑)

―監督は、雨、好きじゃないんですね(笑)

濡れるのがイヤなんです。だけど、雨を意識して見てなかったな、というのもあって。この話を頂いたのが去年の9月とか10月でしたが、その時期は家に帰るときによく雨が降ってて、意識して見るようになったら、見え方が変わってきました。
最初は作品の中で、雨のエフェクトをどういう風に見せたらカッコイイか、印象的になるだろうかという意識で、スタジオの周りの風景を写真に撮ったりしていましたが、水たまりに跳ねる雨や、水たまりへの映り込みが揺れる形、あと、水滴に反射した町の光がちょっとキラキラして見えるところとか、空の色に、音など。住んでいる場所が比較的静かなので、雨が降っている夜に帰っていると、雨が傘に当たる音とか、そういうものひとつひとつに立ち止まってみて。晴れの日にはこういう風に見えないんだろうな、とか、あ、いいものかもしれないな、って思えるようになりました。まあ、今でも、雨好きか?と質問されれば、そんなに好きじゃないんですけど。でも、まあ、キレイなところもあるよね、と言うようになったかな、と。

―面白いですね。作品の中ではどのように表現されているのですか?

そうですね、例えば、空の色。見え方が変わる一瞬という表現のために、最後のカットでは、ガラッと色を変えたいと初めから思っていて、イメージボードを描いていただいた長砂(賀洋)さんにも、スタートの雨のカットとラストの色が変わるカットを2つ、まず描いていただきました。最初のどよーんとした雨の嫌な感じと、最後の世界が明るくキラキラして見える。現実離れしてもいいので、いろんな色をいれてくださいという形で、あげていただきました。
ただ、雨のことも少しだけポジティブに見えてくれればよい、という印象なので、雨上がりの虹とかはやらないようにしましょう、と。雨のおかげで虹は出るのですけど、それだとちょっと直接的かな、って思ったんですよね。すごくステキな絵にはもちろんなると思いますし、観ている人にとってもわかりやすいと思うのですけど。最後まで雨が降っていて、雨が降っているけどキレイという風に見せるにはどうしたら良いか、という意識で表現しました。

―キャラクターまでCGという作品ははじめてということですがいかがでしたか?

毎回、新しいチャレンジを何かしらしようと思っています。今、シリーズの1話数とかのコンテ演出やらせてもらって、監督がOKしてくれればできるという形ですけど、今回は自分が監督だったので、いろいろやろうと思いました。最終的な映像になった部分とならなかった部分とがけっこうあったので、課題はいろいろ残るな、と思いつつも。
キャラクターに関しては、CGアニメってどういうことが得意なんだろうな、とか、どういう風にした方が活かせるとか、苦手な部分をなくせるのか、を、あまり考えずに描きはじめてしまったので、普段、紙で描いてるものと描き方を変えなかったんですね。キャラのデザインに関しては、普通のセルのキャラっぽくデザインをしてもらっています。
表情に関しては、CGの場合は課題があるんだろうというのはわかっていたので、寄るところは寄る、引くとこは引く、ということで意識して描きました。引きの部分はモーションキャプチャーで役者さんにやっていただいています。その後、動きのタメとか、抜きなどのメリハリやポーズを、手描きのアニメのタイミングに寄せる方向で整えてもらいました。

―実際の雨を観ながら、見え方が変わった、光、色、動きなどお話しされて、あと、音というお話しもありましたが、音のこだわりは?

音楽が入る前まで効果音が入っていますが、なるべく雨の嫌な感じを出してもらおうと思ってお願いをしました。地面に向かって雨が降る音だけでなく、ビニール傘にあたる音、缶に当たる音など、あのカットは音を特に大事にやってもらいました。「うわ、濡れるわ…」って思うような音になるように。色味やライティング含めて全体の工程を通して、本来の使い方じゃな
い形で傘が雨に打たれているということが、かわいそうに見えたり、嫌な感じに見えたり。しかも、プレゼントでもらったものがいきなり、と。そういう残念だイヤだという印象になってくれればいいな、と。

―最初の嫌な感じと、最後のあのきれいな景色の間はどのように展開をつくられていったのですか?

元々イメージボードでも妖精さんの周りが少し光っているように色が変わっていたので、それは面白いですね、ということで本編でもそれをやろうということになりました。影つけとかは全然変えずに、妖精さんのまわりだけ、世界の色が違って見えるように、妖精さんが楽しそうにみえてもらえたらいいなと。

―今回、初監督作品なんですよね。なられてみていかがですか?

はい、初ですね、お芝居は。一番重要なことって、観ている人にわかってもらえる、伝えるということで。そういうことって難しいのだと、改めて思いました。繋がった映像をみて、あ、ちょっと足りなかったかな、とか。これなら、やりすぎたかな、とか。なんか、そういうバランス感とかは、もうちょっと、できたんじゃないかな、とか。そう思う部分もあるんですけど。

―監督って楽しいですか?

んー…楽しいと思います。シーズンの時の1話っていうのは、まあ、全体を通してみて、で、この話数自分がやるんだったらどういうことができるか、というように、考えながらやらせていただいて、で、監督OKだったらそれを全力でやっていくという形です。 監督は全部できますが、逆にそれが怖い部分もあります。これ、面白いのかな?と悩むこともあるし、最終決定は全部自分なので、クオリティに対する責任の重さだったり、緊張感とかは常にありました。今回は、自分の名前で、自分がいろんな人にお願いして、こういう風にしてください、これならOKです、という形でお願いしているので。覚悟というものが、2分の作品ですけど大変なことだな、と改めて思いました。

―これからやってみたいことや、つくってみたい映像はありますか?

元々、ロボットがすごく好きなので、ロボットを動かしたいという想いはあります。また今回の作品のテーマであるインクルージョンや多様性、相互理解をテーマに作品をつくりたい、と思っています。そこにロボットが絡められれば一番いいのかもしれないですね。あとは、なるべくいろんな仕事をやってみたいな、と。やらせてもらえるならアクションものもやりますし、ホラーとかもできるのならやってみたい。毎回、テーマや内容にあわせて、自分で何ができるんだろうと思いながらやっているので。

―多様性、相互理解、すごい、いろんな切り口で描けそうですね。

はい、そうです。たぶん、すごく直接的にもできるし、人と人でなくても、人とロボットだったり、人と動物だったりも、描くことができると思います。
「ドラえもん」が、すごく好きなんです。もともと、アニメとかの入口は「ドラえもん」。子どもの時もみていて、すごく面白いって思ってたし、大人になった今になっても劇場版とか見返すと、すごく面白い。そして、藤子先生の言いたいことが、まったく直接的ではなく、ちりばめられています。環境問題だったり、それこそ、相互理解的なことなど。こういうところから影響受けたんだろうな、と。子どもに見てもらえるアニメって素敵だな、って思います。あとは、制作で仕事をしているときに「宇宙兄弟」という作品で、渡辺 歩監督の下で設定と、少し演出もさせていただきました。監督の作風や優しい感じが、ドラえもんとあっていて、すごく好きだったので、たぶん、渡辺さんの影響も大きいと思いますね。
学校で見てもらえる、道徳アニメとかもやらせてもらえるのであれば、それは楽しいと思うんですけど、伝えたい事が観ただけでもフワッと伝わる作品がやりたいな、って思います。南家こうじさん、という、アニメーターでもあって、アニメ作家でもあってという方がいらっしゃるのですが、「みんなのうた」のアニメも作ってらっしゃって、作品によって作り方をけっこう変えていて、楽しく見えるためにはどうするか、という表現方法が多様で、すごくステキだな、って思います。もちろん実際アニメを制作するうえでは色々制約条件もありますが、キャラがこういう感情だったりとか、こういう動きするのだったら、こういう見せ方の方が面白いかもしれないよ、と、柔軟に対応できるようになれるといいな、と思います。他の作家さんがやらないことで、勝負できるといいな、と。うまくいくかどうかはわからないけど、やってみたいな、と思います。

―最後に、お聞きしたいのですが、石井監督にとって、アニメはどんな存在のものですか?

(しばらく無言で)なんだか、何回も聞かれたことがある気がするんですけど、、、そうですね。こんな風に悩みがいのあるものだと思います。作品作りに対してもそうですし、自分がこのままやっていてもいいのかな、という将来の不安でもありますし。仕事なので。コンテとかを考えてるときは楽しいですし、かといって、悩んでいるのが全部楽しいわけじゃないんですけど。大学でやっていたことと全然違うので、家族に心配かけて、業界に来て。まだ、やめらんねぇ。って。アニメは、悩みがいがある魅力をもつだと思いますね。

―ありがとうございました。これから、生み出される作品、楽しみに、ワクワクしながら待ってます!

更新日:2019年5月29日